ブラケットとワイヤーをセットして矯正治療が始まると、お口の中の環境は一変します。
歯を動かすことによる痛み、装置があることの違和感。そしてご飯が食べにくいということ。
この記事ではワイヤー矯正をする場合の、食事の時に気を付けたいことについてお話していきます。

まず、注意するべき食べ物があるのであって、「食べてはいけない」ということではありません。 治療初期は叢生(歯並びのガタガタ)が大きく、歯が動く痛みを感じやすかったり、まだ食事に慣れていなかったりするので特に注意が必要でしょう。

① 硬い食べもの
・フランスパン
・おせんべい
・ナッツ類 など
実は、矯正装置の接着に使われる接着剤はものすごく強力、というわけではありません。外さないことが前提の差し歯などに使われる接着剤と比べると、接着力は弱いのです。
なぜなら、矯正装置は永久的に使われるものではないからです。治療が終われば不要になり、外すことになります。接着剤が強力過ぎると、表面のエナメル質が欠けるといったリスクがあります。接着力が決して強くはないからこそ、安全に装置を外すことができます。
硬い食べものを咬む時には強い力をかけて咬み切っていて、歯には自分の体重と同じくらいの力がかかると言われています。それだけの力がかかれば、矯正装置は力に耐えきれず外れてしまいますので、強く咬む必要のある硬い食べものはなるべく避けていただきたいのです。
フランスパンはちぎってシチューなどに浸してやわらかくする、おせんべいはかぶりつかずに割って小さくしてから食べるようにしてみましょう。
② 粘着性の強い食べもの
・餅
・ガム
・キャラメル など
粘着性の強い食べものは、矯正装置にくっついて取れなくなることがあります。取れても部分的に残ってしまいがちです。無理に取ろうとすると装置が外れたり歪んだりすることがあります。特に舌側矯正(リンガル)をされている方、表側矯正でも、ブラケットの他にリンガルアーチなど口蓋(上あご)や裏側に矯正装置がついている方は要注意です。 ガムは噛まなければならないのでどうしてもくっつきやすいですが、キャラメルはあまり咬まず、アメのように溶かすように食べるとよいでしょう。
③ 線維性の食べもの
・ほうれん草などの野菜類
・お肉 など
線維性の食べものはワイヤーに引っかかってしまうことが多いです。特に食べ物をすりつぶす奥歯に残存しやすく、装置にからまってしまうこともあります。また、矯正治療で歯を動かし、歯と歯に隙間ができるとはさまってしまうことがあります。ひっかかってしまったものを取り除く際は、まず歯ブラシやワンタフトブラシを使用することをおすすめします。つまようじで取り除く場合は、結紮線(細い針金)やゴムが引っ張られないように注意しましょう。
かぶりついたり、一度にたくさんほおばったりするとお口の中に残りやすくなります。いつもより一口を少し小さくして食べると気になりにくくなると思います。また、ゆっくり噛んで食べることも有効です。 矯正装置を装着すると、お口の中の環境が一変します。今まで通りにお食事ができないこともあると思いますが、少しの工夫で食べやすくなりますので、ぜひ参考にしてみてください
矯正治療中で食べやすいもの
ブラケットを装着したばかりの時に選ぶとよい食べやすいものをご紹介します。

・おかゆ、リゾット
・豆腐料理
・ハンバーグ
・スープ類
・やわらかめの麺類
・ヨーグルト、ゼリー、プリン
・バナナ
矯正治療の初期は装置がある状態でのお食事に慣れておらず、痛みも感じやすいです。まずはやわらかめの食べものを選び、小さめにしてゆっくり噛んでみてください。数日から1週間で食事に慣れ、痛みも落ち着いてきたら少し噛み応えのある食べ物も取り入れてみましょう。矯正治療は苦痛を感じることもあります。ぜひ好きな食べ物を工夫してお食事を楽しんでください。
また、ワイヤーを固定する「Oリング」や歯と歯の隙間を閉じる時に使う「パワーチェーン」などのゴム製のものは口腔内の水分を吸って着色します。特に色の濃いカレーやキムチなどは着色が目立ちますので、気になる方は控えるか、来院日の前日に召し上がることをおすすめします
(くわしくは過去のブログ「 矯正治療中の着色」をご覧ください)。

装置の脱離や破損は少ない方が治療も円滑に進みます。ですから、脱離や破損をそのままにしておくと、歯が思わぬ方向に動いて、治療が長引く原因になることがあります。
万が一装置が外れた、または壊れことに気づいたときはすみやかにかかりつけに連絡しましょう。