歯科治療を受けられる方の中には、金属アレルギーをお持ちの方もいらっしゃると思います。金属アレルギーはピアスやネックレスなどの金属が皮膚に触れた部分に赤味や腫れ、かゆみ、痛みなどの症状が出ます。アクセサリーだけでなく、歯科治療で使われる金属によりアレルギー反応を起こして全身に症状がでてしまうケースも報告されています。
近年、金属アレルギーの方は増加傾向にあり、その予備軍も含め日本人の12人に1人が該当すると推測されています。
当院の初診相談の時に「金属アレルギーですが矯正治療は可能ですか?」というご質問をしばしばお受けいたします。
今回の記事では、金属アレルギーの仕組みや症状と矯正治療に関してお伝えいたします。
■ 金属アレルギーとは?
体液などによりイオン化した金属が人体のタンパク質と結合し、身体にかゆみ・かぶれを引き起こす疾患を「金属アレルギー」といいます。
アレルギー反応は大きく分けてⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型の4つに分けられ、歯科金属に関連する金属アレルギーはⅣ型に該当します。
Ⅳ型アレルギーは24~72時間かけて症状が出るために遅延型アレルギーとも呼ばれております。
金属アレルギー反応はもともとなかった人でも、金属の蓄積により治療の途中で突然発症してしまう可能性もあります。
症状は大別して
・接触性皮膚炎
・接触性口内炎
・全身性金属アレルギー
の3種類となりますが、一般的に知られているのはアクセサリーによる接触性皮膚炎です。
どの金属にアレルギー反応が生じるかの診断には、皮膚科で行われるパッチテストを行う必要があります。
一方で、歯科金属は「全身型金属アレルギー」の原因の1つで、口の中で溶けだして全身に運ばれることから、口の中だけでなく顔や全身などの様々な部位に症状がみられることが特徴です。
歯科治療に関連した金属アレルギーは、アクセサリーによる金属と比べて発症頻度は少ないといわれていますが、万が一、発症した場合には口の中からアレルギーとなる原因物質を取り除き、口や全身に出ていた症状が改善するか様子を見ていく必要があります。
■ 金属アレルギーを起こしやすい金属
ニッケル(Ni)・コバルト(Co)・スズ(Sn)・パラジウム(Pd)・クロム(Cr)・亜鉛(Zn)・鉄(Fe)・銅(Cu)などは金属アレルギーを起こしやすいと言われています。
特にニッケル(Ni)・コバルト(Co)・スズ(Sn)・パラジウム(Pd)・クロム(Cr)は歯科金属の中でも起こりやすいとされています。
■ 金属アレルギーを起こしにくい素材
金(Au)・白金(Pt)・チタン(Ti)が挙げられます。
特にチタンは生体適合性(人体に埋め込まれても無毒で、体液に腐食されず、長時間の使用に耐えうる材料の性質)があり、人工関節やデンタルインプラントにもよく使われています。
しかし、あくまでもアレルギーが起こりにくいものであり、アレルギー症状が出てしまう可能性がゼロというわけではありません。
■ 矯正歯科治療で主に使用する金属材料と組成
歯科治療で使用する金属は2種類以上の金属を混ぜ合わせた合金がよく使用されています。
一般的に使用される矯正器具に含まれる金属の組成の一例を下記に示します。
ニッケルチタンワイヤー・・・ニッケル(Ni)、チタン(Ti)
ステンレススチールワイヤー・・・クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)
メタルブラケット・・・クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)
バンド・・・クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)
■ 当院での金属アレルギー対策
当院では、金属アレルギーの方の矯正治療では、アレルゲンとなりにくい
チタン製
金属ではなく、プラスティック製
いずれかの矯正装置を使用し矯正治療を行います。
一般的な矯正用ワイヤーやブラケットは、アレルゲンとなりやすいニッケルを含有することが多いですが、ニッケルを含有しないベータチタン製のワイヤーを用いることにより矯正治療を行うことが可能です。
マウスピース矯正での治療
金属を一切使用しない矯正治療の方法ですので、金属アレルギーの方でも安心して治療を受けることができます。
ただし、マウスピースによる矯正治療は取り外しができるために使用時間を守らないと治療が進まなかったり、適応症が限られて歯並びの状態によっては治療が難しい場合もあります。
当院では金属アレルギーを考慮しアレルゲン対策を万全に行っておりますのでどうぞご安心ください。
まとめ
金属アレルギーは、いつでも誰でも発症しうるものです。
お口の中を清潔に保ち、酸性に傾かないようにすることが金属アレルギーの予防にもつながります。
金属アレルギーの疑いがあり、これから矯正治療を受けられる方は矯正器具の選択肢が多い矯正専門のクリニックにまずは相談してみてはいかがでしょうか?