歯が動く仕組み (矯正治療中の話)|浦安市の矯正歯科専門医院・新浦安カタヤマ矯正歯科
2022.08.08

歯は硬い物を噛み切れるぐらい動かないのに、矯正治療でどうやって歯が動くのかと疑問になりますよね。私も学生時代は歯が動く事が不思議でした。身体のすべての骨は常に作り替えられています。歯が動く仕組みもこの原理を応用し、歯根が埋まっている歯槽骨のリモデリングを利用して歯を動かしています。

今回は矯正治療で歯が動く仕組みに関してご説明させていただきます。

■ 歯が動くための正常な歯周組織

上の図のように歯の周りには色々な組織があります。

歯が動く仕組みで重要になるのが、歯根膜と歯槽骨です。歯根膜は繊維組織でできており、噛んだ時の力を分散させるクッションの働きをしています。この歯根膜には毛細血管や神経が通っており、歯に栄養を補給していたり、神経によって噛んだ時の感覚を脳に伝達したりしています。

歯根膜の繊維は一定の幅を維持しようとします。一般的には0.25㎜と言われています。歯が下の図の①のように力が加わると、左側の歯根膜の繊維組織は圧迫され、右側の歯根膜の繊維組織は引っ張られます。そうすると、青の部位では歯根膜の毛細血管から骨を吸収する破骨細胞が出現し、骨吸収がおこり、緑の部位では毛細血管から骨芽細胞が出現し骨の添加がおこります。そのため、歯根膜は一定の幅を保つことができます。

■ 歯が動くための骨のリモデリング

破骨細胞と骨芽細胞により、「古い骨を溶かし、新しい骨を形成する」という、骨が作り替えられること(骨のリモデリング)を利用して矯正治療は歯を動かしていきます。

歯の移動は一か月に約0.5~1㎜程度移動すると言われています。矯正器具の調整は約1か月に1度です。その理由は、骨の代謝機能を利用して歯の移動を行っていることに関係します。早いタイミングで治療をし続けると、骨の添加が起こる前に新たに矯正力を再度かけてしまい、骨吸収がさらに進んでします。歯槽骨が吸収してしまうと歯の動揺が出てきてしまうリスクがあります。 矯正治療は弱い力で、ゆっくりと歯を動かすことが理想的です。強い力をかけると早く動くというわけではありません。過剰の力を加えてしまうと、歯根や周囲の骨に大きなダメージを与えてしまうリスクがあります。

■ 歯の動かし方の種類

歯を動かす方法は6通りあります。

①傾斜移動
傾斜移動はティッピングともいい、最も簡単な歯の移動方法です。歯冠部に力を加えることにより、歯が傾斜します。歯は歯根を中心に回転するのではなく、歯根1/3部(●印の部位)で回転し、歯冠は力の加えた方向に移動し、根尖は逆方向に動きます。

②歯体移動
歯体移動とは、歯冠と歯根尖を同じ方向に同じ量だけ移動させる方法です。傾斜移動させないようにワイヤーに工夫をしない限りは歯体移動を行うことは不可能です。高い技術が必要になります。

③歯根の移動
歯根を移動させることトーキングともいいます。トーキングとは歯根尖を意図的に移動させる移動形式です。回転中心が歯冠部(●印の部位)にあるようにして偶力を歯冠に与えなければなりません。歯冠部に力を作用させて、少し離れた根尖をコントロールするので、技術が必要です。

④圧下
歯の長軸方向に圧下を行う移動です。歯の移動の中で最も起こりにくい移動です。歯槽底が強い圧迫帯となって歯槽骨が吸収しますが、根尖の吸収も起こりやすいです。

⑤挺出
歯の長軸に沿って、歯が歯槽骨から抜け出る方向に移動することです。

⑥回転移動
歯の長軸を中心として捻転している状態を改善することです。後戻りがしやすいといわれています。

■ 歯の移動しやすさ

(簡単) 挺出→ 傾斜 → 歯体移動 → 圧下 (困難)

加える力の大きさや方向を十分に考慮しながら無理なくブラケットを用いたワイヤー矯正やインビザラインに代表されるマウスピース矯正などで歯を動かしていきます。

矯正治療の期間は年単位となりますが、キレイで機能的な歯並びにするためには必要な期間となりますので、一緒にがんばっていきましょう。

タグ
おすすめ記事
2021.10.12
2021.09.22
2021.12.04
2021.10.13
2021.10.26